2025/02/19 21:46


記憶に残る昔話、私が糸魚川に住んでいた頃 職人の方々や翡翠商の方々と交流させて頂くうちに聞いた”幻の翡翠”の話です。


小滝川付近にカメラ片手に何度も取材に訪れ 現地の方にリアルな昔話を聞かせて頂いたり、翡翠商の方々に興味深い話を聞かせていただいたり、そういう体験は今でもよく思い出し 良い思い出です。糸魚川翡翠の生きた歴史を知るうえで、貴重な体験をさせて頂いたと本当に思います。


そんな話の中で登場する 一般的に流通する糸魚川翡翠とは一線を画す “幻の糸魚川翡翠”。口々に聞く話は もはや伝説のような何十年も前の話で、幻の翡翠だ…!!とワクワクしたものです。


「ここで採れたんだよ、ここだよ。」

もう数十年も前の話を生き生きと話される先輩方、どんなものか見てみたくなります。

「〇〇ではなぁ、子供の頃にこういう翡翠があって…」

そんな風に教えて頂いた幻の翡翠の中で、個人的に特に印象に残った翡翠が3つあります。



月の明りに透けるほど神々しい 金山谷のグリーン翡翠


青海川水系の天女の羽衣ような青味がかった 天使ラベンダー翡翠



そして、清流の中でも透けて見えるほどのジェムクォリティ入りコン沢翡翠


これらはいずれも “抜けた翡翠”に類するものです。ミャンマー産翡翠に肉薄するほどのクォリティ、不透明質・不純物多数が常の一般的な糸魚川産翡翠のクォリティをはるかに凌駕している質の翡翠です。


一般的な糸魚川産翡翠の中でも優良な部類と比べてみても、格の違いは明らかで↓


月明りに透ける金山谷ムーンライトグリーンと姫川水系のアップルグリーン。手前の2個が姫川水系アップルグリーン、奥の2つが金山谷ムーンライトです。


圧倒的。

透光性の高さ、色合い、この風合いには 糸魚川翡翠ファン誰もが心奪われます…。


ヨシオ産ラベンダー翡翠と青海水系天使ラベンダー翡翠。手前2個がヨシオ産、灰色味を感じるラベンダー翡翠が多い中 ラベンダー色がしっかり感じられるものです。奥2個が青海水系天使ラベンダー。


こちらも語るまでもないほどの透光性。

羽衣のような抜け感、はんなりとした たゆたう色合いがいかにも和風。博物館で目にするレベル、海岸で翡翠拾いをする誰もが夢に見る ラベンダー翡翠です。



宝石のクォリティを分類する世界基準でいえば、大多数の糸魚川翡翠は岩石扱いの圏外です。そんな中でもイレギュラーはあり、数十年に数回程度 突然現れた変種のように皆さんをびっくりさせるようなクォリティの翡翠が現れる。糸魚川の翡翠を長く見つめてきた方々の昔話に そういう翡翠は今も生き続けています。


糸魚川翡翠に携わり何十年という目の肥えた方々が うっとりするように教えてくれた幻の翡翠は、間違いなく一生に一度出会えるか出会えないかの糸魚川翡翠でしょう。私が糸魚川に移り住んだ当初は「もし出会えたら…どうしよう!?」と夢が膨らんだものです。


はんなりとした紫味、たとえようのない天使ラベンダー。近年、職人に原石の縁があり実現できた 夢のような珠。

天使ラベンダーの原石と同個体、「青ラベ」と呼ばれる部分。マイルドで青みがかった不思議なカラー。白系の抜けた翡翠も同個体原石から制作されたものです。並べると微妙な色合いの差がよくわかります。肌で感じるハイクオリティ、まさにレア中のレア。

すばらしいの一言、金山ムーンライトグリーン。王道色かつ糸魚川産でここまで 瑞々しく高貴なグリーンは滅多にお目にかかれません。



翡翠に関わり月日を重ね 職人の長年の賜物と私の翡翠に対する熱意が通じたのか、そういうものを実際に手に取る機会に恵まれ こうして紹介できるなんて…信じられないようなラッキーで…石屋冥利に尽きます。こうして振り返ると、奴奈川姫の恩恵は本当にあるのかも?なんて思ってしまいます(笑)



地道にコツコツと経験が増えていきましたが それも全部繋がっていて、原石枯渇が深刻な現在に 最高の珠を送り出せることとなりました。アクセサリーとして装備するだけではなく、コレクションとして眺められるようジュエリーBOXに収め 送り出そうと思っています。


誰しもが手にすることのできない幻のような翡翠、この稀有な珠を手に取って下さる方に「こんなにうつくしい糸魚川翡翠と出会うことができて幸せだ!」と感じて頂けたら それが何より嬉しいです。