2024/07/01 17:46

抜けた翡翠というのは「色」が抜けた翡翠のことです。原石状態での見た目は、半透明で透光性がいかにもありそうな雰囲気・トロッとした独特の風合いが特徴。
世界的に評価の高い翡翠の産出ポイントといえば やはりミャンマーですが、ミャンマー産翡翠のほとんどは この「抜けた翡翠」です。

糸魚川産にもあるにはあります。ほんとごくごく稀にみかけます。糸魚川産翡翠は不透明質の個体が殆どですので、原石でも見ればすぐわかるほど異彩を放ってます。

抜けた翡翠で製作した珠の半透明感と雰囲気は、垢ぬけた美しさが宿ります。
ご存じの方も多いと思いますが、ヒスイ輝石岩は 名称通り「岩石」ですので、 ヒスイ輝石+色んな鉱物で1つの個体として成っています。+色んな鉱物の部分に 翡翠の発色(色)に関わるものが入っていおり ザックリ分けると、
ヒスイ輝石+オンファス輝石+鉄 etc=グリーン翡翠
ヒスイ輝石+オンファス輝石+チタン+鉄 etc=青翡翠
ヒスイ輝石+チタン+鉄 etc=ラベンダー翡翠
ヒスイ輝石+グラファイト etc=黒翡翠
こんな感じで発色します。
純粋なヒスイ輝石はグラニュー糖みたいな感じで集まると白色っぽくみえる為、白翡翠は純粋なヒスイだ!と思われがちですが、厳密には白翡翠とよばれているものは 抜けた翡翠ではないものが大多数です。

職人の言う「抜けた翡翠」というのは「色」に関わる鉱物がとても少なく、ヒスイ輝石の含有率が高い個体のこと。

画像は糸魚川産でラベンダー翡翠と呼ばれる個体ですが、実に様々な色調があり「これ何色?」と首をかしげるものも ラベンダー翡翠と言われたりするのが現状です。そういう個体は ヒスイ輝石よりそれ以外の鉱物が圧倒的に多い「ヒスイ輝石がちょっぴり入ってる岩石」です。
ミャンマー産も糸魚川産も 同じく「翡翠」とよばれていますが、パッと見の印象でいうと
ミャンマー産翡翠(ヒスイ輝石含有率高)
→つるつるでぴかぴかの宝石
糸魚川産翡翠(ヒスイ輝石以外の鉱物多数)
→ぼこぼこで地味な色の石
見比べてみるとこんなイメージを持たれる方が多いのではないかと思います。
同じ翡翠と呼ばれるものでも ヒスイ輝石の含有率が明らかに違うので、原石状態そして加工品の雰囲気も異なるわけです。糸魚川産の「ヒスイ輝石がちょっぴり入ってる岩石」をミャンマーで翡翠を見慣れている人に「これが日本のヒスイです!貴重で高価なんですよ!」と見せたら、首を傾げられてしまうかもしれません(苦笑)
世界的に評価の高い「抜けた翡翠」ですが、糸魚川産の「抜けた翡翠」の評価は その稀少性を鑑みると低すぎるのでは…?と個人的に思っています。糸魚川産の抜けた翡翠個体が圧倒的に少ない(見る機会が少ないため見慣れていない)ために、ヒスイ輝石以外の他鉱物の派手なカラーを翡翠の発色と混同してしまい「わかりやすくグリーンに色づいた石」=「良いヒスイ」だという認識が広まっているためだと思います。糸魚川産翡翠好きとしては、非常に残念だなぁと思う部分です。

原石状態のままだと加工したときのイメージが掴みにくいのがヒスイの常ではありますが、この抜けた翡翠は直感で良いものができると感じさせるほど 原石状態からもポテンシャルの高さを感じさせてくれます。
日本人の美的感覚は四季の移ろいで心情が動くほど繊細で、様々な色を感じ取れる 素晴らしい感性だと思います。年月を重ねると感性も育ち、あらゆるものに わびさびの世界や思想を見いだせるようになっていきます。
それと同時に、いつまでも子供のような純粋な目線で ビー玉を「綺麗、かわいい」と感じていたころの自分を忘れたくないな~と常々思っています。
付加価値や情報は横に置き、目の前にある「美しいもの」をうつくしいと言える人でありたいものです。